2023年12月7日木曜日

哀しい性(さが)かな ~ 後ろ髪を引かれる

 「ありゃ、なんだ?!」。山越えの道路の真ん中に、何か黒いかたまりが落ちている。 助手席の女房殿が「あれ、動物じゃない?」「大きな枯れ葉だよ」「そうかなあ?」、、、通り過ぎざまに見るとなんと動物。親猫のように見えた。死んでいる。自動車にはねられたようだ。「ううう、、」。後ろを気にしながらしばらく走った。女房殿に向かって「おい、どうする?」「どうするって、道具ないわよ。素手でするの?いつもの鋤簾(じょれん)を取りに帰る時間もないし」「どこか棒でもあればなあ。落ちとらんなあ」「もうそのまま行きましょう。近くの住人がどうにかしてくれますよ」「仕方なしか」、、、連絡すれば保健所か役場かの職員が来て処理するだろう。だが、あのままだったら 今に道路の真ん中でぺちゃんこだ。動物とはいえ浮かばれん。自分自身なんだか許せん。道路わきに棒が落ちていないか、探しながらの運転。「あった!」枯れた枝が落ちていた。早々拾ってUターン。数キロは走っていた。
 現場に到着すると猫ではなく、大きな狸だった。柔らかいので死んだばかりだろう。道路の真ん中から端っこまで棒を使って運ぶ。運悪く道路脇に柵があった。更に棒で移動して藪に葬った。「汝是畜生、発菩提心、南無妙法蓮華経、、、」。胸を撫でおろした。後ろ髪はないのに、「後ろ髪を引かれる」とは、このことだろう。俺、本当は優しい人間なのかもしれない。こころは、今日も大吉!

 追記 ~ ひょっとして、明日あたり、風呂敷包みを下げた狸の親子が人間の姿に変え、私の家を訪ねて来ないだろうか、などと思い浮かべるのである。自分ながら、なんと哀しい性(さが)かな。

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